有名女性誌の今年の人気芸能人

有名女性誌の今年の人気芸能人ランキング、

やはり例年通り、キムタクがナンバーワンなのだそうだ。





齢30を過ぎ、結婚し、子供もいるというのに、この人気は

凄い。なんというか、ハリウッドのトム・クルーズ的に

恒久的な人気をとってしまいそうな勢いがある。




キムタクが世に出てきた頃、とても嫌いだった。

理由はシンプルで、松田優作を真似ていたからだ。



芸能人でも映画俳優でも、何かベースとなる先人が

いて、そのスタイルを真似ることで成功した人は多い。

怪優ともいうべき丹波哲郎にしても、個性的演技の代表格

田村正和にしても、やはり模倣の対象となる先人がいる。



キムタクが松田優作を真似ても、それは非難されるべき

ことじゃない。ただ、個人的に嫌いだった。




しかしその後、SMAP×SMAPなるTV番組がはじまり

その中でキムタクは、いとも手軽に、松田優作を真似る

バラエティーコーナーを始めてしまった。



このあっけらかんとした姿勢に、逆に好感を覚えた。




ラジオ番組の中で、好きなAV女優の名前を挙げたり、

工藤静香のファンと告白し、その当の本人と結婚する。



ジャニーズの歴史において、人気トップ期の結婚という

前代未聞の事件を起こしておきながら、それでいて

相変わらずトップ人気を誇っている。これは凄いことだ。




ジャニーズ事務所のマネジメント戦略も優れている。

結婚を境に、タレントスタイルを徹底的にハードボイルド

路線に傾けた。家庭的な匂いを完全に消し去った。



先日のテレビの「ぐーたん」で、工藤静香が出ていて、

子供との生活の話は大いに披露したが、旦那に関する

話は一切しなかった。テレビの前の女性達は残念がった

だろうが、これは事務所とテレビ局の暗黙のルールだった

と伺い知れる。




前のブログでも書いたが、一度だけキムタク本人と会った

ことがある。テレビのインタービューシーンに出てくる

ヒルなイメージと違い、楽屋で話すキムタクは、明るく

柔らかいイメージだった。人懐っこい感じすらあった。



生い立ちも一切不明、私生活も不明、というのがジャニーズ

タレントのルールになっていて、キムタクも同様の扱いに

なっているが、おそらく幸福な環境に身を置いているだろう。



だが、女性誌で支持されるキムタクには、柔らかさや幸福さは

微塵も感じられない。危険でハードボイルドなイメージだ。




オダギリジョーにせよ誰にせよ、女性が憧れる男性像は

どこかスサんでいて、Sっぽいオトコに偏っているようだ。






さて、自分の中での芸能人ランキングを挙げてみよう。




あまりテレビを観ないし、極めて流行に疎いタイプなので、

かなり妙なランキングになると思う。





10.所ジョージ

9.キムタク

8.おぎはやぎ

7.関口宏

6.ふかわりょう

5.浅野忠信

4.長州小力




とりあえず10位から4位までを挙げた。




所ジョージは、別に好きではないのだが、

"趣味で生きる男"というスタイルを確立させたという点を

評価してランクイン。たまに彼の自宅の中を紹介する

企画コーナーが放映されていたりするが、そのときは

どんな裏番組にも浮気せずに観る。とても面白い。




キムタクは、冒頭から書いた通りだ。評価は高い。




おぎやはぎは、話の引き出しが多い。決して生放送に

強いわけではなく、エピソードの引き出しで勝負する。

この努力を評価したい。




関口宏は、声の良さ。この一点に尽きる。

チャンネルを回していて、彼の声が聞こえてくると

とりあえず手を止めてしまう。声のパワーが凄い。




ふかわりょうは、単純に好きだ。

笑いのツボというか、そういうものを作る才能がある。

古くはタモリ、直近ではダウンタウンがそれをやって

いたが、ふかわりょうはとても長くチャレンジしている。

もう少し頑張ればタモリになれる気がする。




浅野忠信は、俳優としてスゴイ。顔の存在感がスゴイ。

もしチャンネルを回していて、関口宏の声が聞こえる

チャンネルの裏で、浅野忠信が一言もしゃべらずに

ただ顔のアップで黙っていたとしたら、いい勝負だろう。




長州小力は面白い。芸人としてバランスがとれている。

まず、"出オチ"(舞台に出てきただけで笑いがとれる)で、

しゃべりもイケて、芸ネタは完全に計算ずくし。

ネタをやるのに、カンペ(カンニングペーパー)を手に

舞台に出てきて、ネタの途中で内容を忘れて、こっそり

カンペを見る、という手法で笑いをとったりする。

これだけのことでも、賢さが分かる。






10位から4位までを挙げたが、この順序を決めるのに悩んだ。




芸人コンビのイツモココカラと、NHK教育の「できるかな」の

ノッポさんが、残念ながら番外となってしまった。




明石家さんま、島田伸助、ダウンタウンあたりはランクイン

しそうだが、彼らは絶対に入らない。




理由がある。「お笑いSE」というテレビ専門用語がある。



SEとは"サウンドエフェクト"の略で、例えばクイズ番組で、

司会者が「問題。」と言ったあと、"ダダンッ!"という効果音が

入る。これは、スタジオ収録のときには入らずに、編集の段階で

ディレクターによって故意に入れられる音源だ。



お笑いSEとは、誰かが面白いことを言ったあと、"ワハハハ"と

笑い声が入る、あれのことだ。つまり、スタジオ収録のときは

起こらなかった笑い声を、編集の段階で入れる。



前述したランクインしない芸人さんたちは、自身の司会番組を

たくさん持っている。そのどれもが、編集段階で「お笑いSE」を

入れたものだ。さんまのからくりTVのコーナーなどヒドイもので、

収録では何にも笑いが起きなかったとしても、編集段階で

"ワハハハハハハッ"という爆笑SEを入れることで、茶の間の

視聴者を無理に笑わせようとする。



テレビ番組の手法としてはそれもいいだろうが、それが

芸人の力量や才能を表わしているわけでないのは明白だ。

だから、「さんまのからくりTV」、「ダウンダウンのガキ使い」、

行列のできる法律相談所」の類は、完全に欄外としてみなす。






3位から1位を挙げよう。





第3位はビートたけし



これは妙な言い方になるが、彼の人生がすごい。

コントを流行させ、それが廃れる前にバラエティーへ行った。

そこで若手を養い、事業家になり、映画へ足を伸ばした。



俳優として行き詰ったころ、スクーター事故で顔が壊れた。

壊れた顔が、彼を名優に仕立て上げた。



監督業。「座頭市」は、自分の中でも最高の映画の一つだ。



結果、ビートたけしという生けるエンターテイメントになった。

これだけで、日本の芸能史に残る最大の人物といえるだろう。



あえて言うなら、たけし軍団からは一流の名優が育っていない。

渡哲也や舘ひろしを生んだ石原軍団のようになってほしい。





第2位は、関根勤



おぎやはぎも含めて、今の日本の芸人というのは、笑いの

引き出しの多さ、ネタの完成度の高さで勝負している傾向が

あるが、この人の場合、根っからの芸人だろう。



引き出しもネタもなく、ただライブ環境だけで強い。

笑いを取ろうとするとき、話を自分の方向へ引っ張ってきたり

せず、自分のワールドへ引き込むこともせず、ただその位置の

ままで笑いを取ることができる。長々としゃべらない。

とても簡潔な言葉で、短くしゃべり、それで長い笑いを取れる。



高田純次もそれに近いが、彼よりも数倍すごい。



ひとつだけ分からないのが、彼が萩原欽一の愛弟子だと

いうこと。欽ちゃんのどこが面白いのかさっぱり分からない。

だが関根勤という面白い人間を生んだというだけで、やはり

すごい人物なのだろう。






そして、第1位。





ここは全く悩まなかった。文句なしで、江頭2:50




なんというか、理由のつけようがない。




あえて言うなら、江頭2:50のことを"真の芸人"と呼び、

彼を除いた他の芸人は、"テレビ芸人"と呼ぶべきだろう。




江頭2:50は、面白いことをしゃべらない。

人を笑わせようとしない。そして、自分も笑わない。

何かに対して、脇からコメントすることもない。

面白い企画に参加したり、面白いコーナーで立ち位置を

確保しているわけでもない。他人の補佐は要らない。

ただ純粋に「江頭2:50が面白い」のであって、

それ以外の他の要素は、まったく存在しないのだ。



これこそが芸人の最高の存在価値だろうと思う。




ハゲでおっさんで痩体でタイツ姿、という初期のスタイルを

頑なに通し続け、芸人としての生き方をまっとうしているが、

彼の才能があれば、別のジャンルで一流になることも

可能だと思う。




例えば、いかりや長介は、あのオッサンキャラとイカつい

顔を生かし、晩年は名俳優として活躍した。

いかりや長介が俳優業をロケットスタートさせた背景には、

バラエティー番組の"怒ってばかり長さん"のイメージから

一転し、男らしいはにかんだ笑顔や、背中で泣いてみせる

演技を見せた、その裏返しのインパクトにあった。




もし、自分が江頭2:50のマネージャーだったら、

本名の江頭秀晴の名前で俳優としてデビューさせたい。



彼の年齢に合わせた人物設定で、キャラ的には、

"社会に溶け込もうと嘘をつき続けているが、最後の最後で

正直さが表に出てしまい、いつも閑職を過ごしている男"

といったスタイルが適しているだろう。



もしくは、もっと暗い影を落としたキャラクターでもいい。



いつも裸であることを生かして、格闘ものでもいいだろう。




松本大洋という大好きな漫画家がいる。

彼の代表作「ピンポン」は実写映画化されているのだが、

最高傑作ともいえる作品「ゼロ」は、まだ映画化していない。



無敵を誇る初老のボクサーは、とても不器用で孤独な存在。

その生き方を抽象的に描いた傑作なのだが、この主人公

五島雅を江頭2:50にやってもらい、実写化してほしい。



映画は間違いなくヒットし、江頭の俳優人生は好スタートを

切るだろう。





だが、俳優業など別方向へ行くことは無かろうとも思う。




彼の魅力が、ストイックなまでの芸人魂、にあると分かって

いるからこそ、自分の芸能人ランキングの中で、10年来に

渡って第1位に君臨し続けているわけだから。






江頭さん。今、あなたが何処で何をしているのか知らないが、

これから先も、体に気をつけてがんばってほしい。





END

会社経営をはじめてから、もっぱら私服姿が多くなった。

会社経営をはじめてから、もっぱら私服姿が多くなった。





スーツを着る機会は激減し、それこそパーティーでもなければ

ネクタイをつけることさえ無くなってしまった。





家のクローゼットには、7着のスーツと2着のコート、

20本のネクタイが、淋しく掛かっている。




靴箱には、スーツ用の革靴が7足、冠婚葬祭用の革靴が

2足、これも淋しく佇んでいる。






思えば、サラリーマン時代はお洒落をするのが楽しかった。



最初にスーツを買いにいったのは20歳ぐらいの頃。

親父に連れられて近所の「洋服の青山」へ行き、

1着20,000円ぐらいの安スーツを3着ほど買ってもらった。



その頃は、スーツへのこだわりなど全く無く、ただ会社へ

行くときの制服といった程度にしか見ていなかった。




それから数年発ち、地元の食品会社へ転職することに

なり、銀行で5万円ほどお金を引き出して、また青山で

スーツを2着、自腹で買った。高い買い物だと思った。




これまでメディアで働いていた経歴を買われ、会社の

広告窓口を務めるようになったのだが、この頃に

お洒落に目覚めるきっかけがあった。





広告窓口という仕事は、主に広告代理店やメディア

営業マンとの付き合いだ。彼らは一様にお洒落な

服を着て、とてもセンスのいい立ち振る舞いをする。

それが鼻につくイヤな営業マンも数人いたが、

中には気持ちのよい性格の者がいて、すぐに親しく

なった。




そのうちの一人から、ある日、

「あなたは背が高いから、アメリカンスタイルよりも

イタリアクラシコのスーツが似合うと思いますよ」

とアドバイスされた。




その言葉の意味がまったく解らなかったので、

帰り道に本屋に立ち寄って、メンズファッションの

雑誌をいくつか買い込んだ。




それによると、スーツには主に3種類のタイプがあり、

ラインが太めで着まわしの良いアメリカンスタイル、

一般的なラインでカッチリ見えるブリティッシュトラッド、

カラダのラインに沿った細身のイタリアクラシコ

このように分かれるそうだ。



有名人を例に挙げると、

タモリアメリカンスタイル、島田伸助がブリティッシュ

トラッド、明石家さんまがイタリアクラシコ、といえば

おそらく解りやすい。




さっそくデパートへ行き、「ダーバン」という日本のスーツ

メーカーが、イタリアクラシコのスーツを多く作っている

ことを知り、けっこうな値段だったが、一着だけ購入した。



翌日、そのスーツを着て会社へ行ってみたところ、

複数の女性社員から褒められた。



アパレル業界出身の50歳代の取締役から、

「ダーバンを着ているじゃないか、僕もダーバンだよ」と

嬉しげに声をかけられた。





それからというもの、月末になると本屋でメンズファッション

雑誌を買うのが楽しみになってきた。



「ゲイナー」や「メンズクラブ」などを好んで読んだ。




イタリアクラシコのスーツを着るからには、中に着るシャツを

合わせるべきだ、ということが分かった。



シャツには、首の下の両襟の間のVラインが狭いものと

広いものがあり、イタリアクラシコの場合は広いものが合う。

安いシャツはVラインが狭いものが多く、Vラインが広い

ものを買う場合、1万円を下回るものはほとんど無い。



これもデパートのダーバンの店で、3着ほど購入した。




さらに、ネクタイの結び目の大きさ。両襟の間のVラインが

広いぶん、結び目をより大きく結んだほうがカッコいい。




ネクタイの値段はピンキリで、材質によって見た目の

美しさが大きく変わる。お金に余裕がなかったので

いいネクタイが買えなかったのだが、そんな最中に

昔から世話になっている先輩に会い、彼が着けている

高級なネクタイをジロジロと物欲しげに見ていたら、

「欲しいならやるよ」と無造作に手渡され、それ以来

週に5日は安ネクタイ、週に1日だけ高級ネクタイという

日々が続いた。高級ネクタイは「エルメス」のものだった。




革靴も買い替えた。細身のイタリアクラシコスーツには

細身の靴が合う。これは「タケオキクチ」のものを購入した。




その年の誕生日の日、例の広告代理店の営業マンから

「似合うでしょうから」と、一本のボールペンをプレゼント

された。「ウォーターマン」というフランス製のボールペン

で、これをスーツの胸ポケットに差した。





この頃から会社でも、「あの人はオシャレだね」という目で

見られるようになってきた。





社内でのポジションが高まってきた頃、会社の社長と

直接のミーティングを行なうようになってきた。



この会社の社長は地元でも有名なオシャレ社長で、

社交界で「イタリアンファッションを着たサムライ」と呼び名を

つけられるほどに服飾にこだわる人だった。




ある日、この社長の奥様から、

「社長があなたの服装を見て楽しんでるみたいよ」と言われた。



社交会でも知られたお洒落な社長の奥様なのだから、当然

男性の服飾に詳しい。社長が好きなスタイル、好きなブランド、

果ては社長のお洒落に対する概念といったことを教えてもらった。




"ネクタイは、それを着けている人より先に部屋に入ってくる"

という、ある有名なデザイナーの名句をこの奥様から教わり、

さっそく、「タイ・ユア・タイ」というイタリアの有名なネクタイ専門

ブランドのものを2本ほど買った。




翌日、社長とミーティングしていると、さすがに目ざとく、

「良かネクタイば着けとるやんか」と博多弁で誉められた。





革靴を長く履いていると、足の甲の部分にシワがよってくるが、

これを防ぐために、革靴を履いていない間、シューキーパー

という木製の足型を革靴に入れておけばいい、ということを

社長に教わり、すぐに会社帰りにデパートへ駆け込み、

自分が持っている革靴の数の分だけ購入した。



1つが4.000円ほどして、かなりの痛手だった記憶がある。




スーツハンガーも同様だ。それまでプラスチック製の細めの

ハンガーに掛けていたが、これではスーツの肩のラインが

次第にくずれてしまう。人間の肩幅に近い、木製の太めの

スーツ専用ハンガーを使ったほうがいいと知った。

これは、「ながしおハンガー」というハンガー専門店を

ネットの楽天市場で見つけ、まとめて購入した。





これをきっかけに、楽天市場のメンズファッションのお店を

くまなく見渡すようになり、

「デパートや路面の店で買うより、ネットのほうが格段に安い」

ということを発見した。




ボーナスが出たので、いいブランドのスーツを一着だけ

買おうとして、地元中心街にある「プラダ」の路面店へ行き、

18万円もする高級素材のスーツを試着し、そのスーツの

型番とサイズをメモし、それを楽天市場で検索したところ、

「インポートショップ DERA DERA」という店で、まったく

同じ型番サイズのスーツが7万5千円で売られていたので、

迷うことなく即座に購入した。あれは望外の喜びだった。




イタリアクラシコのスーツを代表する「アルマーニ」や

「エルメネジルド・ゼニア」、「ヴェルサーチ」のブランド

スーツは、楽天市場を介することで、格安で買えた。



靴製品ブランドの「フェラガモ」は、楽天市場でも

値下がりしないブランドだったので、手が出せなかった。



だが、ことスーツやシャツに関しては、ボーナスのたびに

良い品質のものを購入することに成功した。




イタリア製ブランド「オリアーリ」のシャツの着心地は最高で、

夏場のクールビススタイルのときなど、歩くたびに柔らかに

揺れるので、見た目だけで会社の同僚達と一線を画した。




楽天市場では売られていない高級スーツも一着購入した。

イギリスを代表する紳士服ブランド「ギーブス&ホークス」の

スーツで、ライトグレー地に白の縦ストライブという、分かる

人には分かるシックなドレスデザインのスーツで、このスーツ

だけは会社行事やパーティーの席にしか着ないようにした。




冬場のコートも買うべきだったが、コートほど高いものはなく、

なかなか手が出せずにいたところ、父親から一着もらった。



父親が若い頃、ボーナスをはたいて購入したものらしく、

イギリスの有名ブランド「バーバリー」のコートだった。



これはかなり高級なものだったらしく、東京出張の際に

着ていったところ、友人から非常に羨ましがられた。





このように、スーツやシャツ、革靴には、かなりのこだわりを

もってそれなりの出費をしてきたが、どういうわけか腕時計

には全く興味が沸かなかった。おかげで全体の出費は

ずいぶん抑えられた。



プラダのスーツにエスメスのネクタイをしているのに、

腕時計が無名のブランドというのはバランスが悪いねぇ」



と上司から指摘されたので、仕方なく、70万ほどする

カルティエ」の"贋物"を、ヤフオクで8千円で買って、

"これ、実は女性もので、しかも贋物なんだよねー"

と周りの笑いをとっていたほど、時計に興味が無かった。




まあ、実はこれは「ハズシ」というお洒落のテクニックで、

例えばシックなスーツにミッキーマウスのネクタイピンを

着けてみたり、ボタンダウンシャツの襟ボタンの片方を

外してみたり、シャツのカフスボタンを花柄にしてみたり、

そういう「クスッ」と笑えるポイントを作っておくわけだ。



自分の場合、腕時計に興味がなかったので、これを

「ハズシ」のポイントにしていたのだが、ここまで来ると

"お洒落のヒマつぶし"的なもので、ある程度の上級者しか

楽しめない技なのだ。



サラリーマン時代の4年間で、ここまで上達していた。




実際この頃になると、本屋で買うメンズファッション誌も

ゲイナーやメンズクラブといった入門誌を通り越して、

"ちょい悪オヤジ"の流行語を生んだ高級誌「LEON」や

渡辺謙あたりが表紙を飾る「メンズEX」を読んでいた。






そうこうしているうちに、サラリーマン時代が終わり、

会社を立ち上げ、身の回りのファッションは一気に

カジュアル路線に傾いていった。




スーツ姿の頃のファッション熱はどこへ行ったのやら、

デパートのブランド店へ行くことも減り、楽天市場

メンズコーナーを見回すことも無くなり、服を買う機会

そのものも激減してしまった。




現在、週7日間のうち、4日はジーパンカジュアル、

3日はランニングウェア、といった割合だ。




最近では、ユニクロの服の着心地の良さを知り、

上から下までユニクロ、という日もあったりする。

ちなみに、今日の上着ユニクロだ。






思えば、ファッション熱というのは、その人の環境や

精神状態に左右されるものなのだ。



若い頃は、友人や同僚からの影響を受けることが

強く、服飾を楽しむ心が豊かな状態だ。




また、スーツスタイルというものは、そのクオリティの

高さが、その人の第一印象の高低に影響を与える。

自分もそうだったが、若い頃は何かと背伸びをして、

手にした給料以上のものを求めてしまいがちだ。

今思えば、父親からもらったバーバリーのコート、

これはとても良いプレゼントだった。



生まれてこのかた、父親からもらったプレゼントの

記憶は、この1着のコートだけだ。






去年、友人に子供が産まれ、その子が先日、

1歳の誕生日を迎えた。



誕生日プレゼントを何にするか随分と悩んだのだが、

ふと自宅のクローゼットを開けてみると、そこに父親から

もらったバーバリーのコートが下がっていた。




この子が将来、スーツスタイルで仕事をするようになって

お洒落心が芽生えたとき、おそらく自分のように、給料

以上の背伸びをするかもしれない。そのとき、自分が父親

からコートをプレゼントされたように、誰かから嬉しい

プレゼントをもらったとしたら、この上ない喜びだろう。




そう思い立ち、その子の1歳の誕生日パーティーには、

子供服でもオモチャでもなく、「高級万年筆とポールペン」

をセットで持参し、"20歳を過ぎたら開けて良し"という

奇妙な条件付きでプレゼントした。





この子が2歳、3歳と誕生日を重ねるたびに、この奇妙な

条件の付いたプレゼントを贈っていくつもりだ。





END

”ハンカチ王子”がテレビを

"ハンカチ王子"がテレビを席巻しているが、

王子こと早実の斎藤投手が使用していた

あの青いハンカチ、デパートで飛ぶように売れている

らしい。





実際に斎藤投手が使ったハンカチのメーカーは

すでに製造を中止しているので、メーカーは違えど

小さく青いハンカチであれば買う、という女性が多く、

軒並み売れ切れているようだ。




なんとも微笑ましいニュースだ、と思う。





しかし同時に、デパートの「商品バイヤー」の存在を

思わずにはいられない。






以前、食品メーカーに勤めていたことがあるので、

デパートやスーパーの商品バイヤー達と交流があった。




バイヤーというのは、それぞれ担当する"棚"を持つ。

棚というのは、それぞれのアイテムごとの"コーナー"を指す。




例えば、レトルトカレーのコーナー(棚)を担当する

レトルトカレーバイヤーという立場の人がいる。



ハウス食品ヱスビー食品など、レトルトカレー

メーカーは、こぞってこのレトルトカレーバイヤーの

元を訪れ、「うちの新商品を棚に並べてください」

と営業して回るわけだ。



バイヤーは、それらのメーカーの商品を選りすぐり、

自分の担当する棚に並べて販売する。



当然、売上予算というものがあり、

例えばレトルトカレーのコーナーの月の売上予算が

100万円とし、棚に配置できる商品ブランドの数が

20種類だとする。



そうすると、1種類のカレーにつき、月に5万円を

売り上げなければいけない。



ひとつのカレーが平均250円だとして、

20種類のカレーがそれぞれ一日6.6袋売れれば

予算達成、というわけである。



バイヤーにしてみれば、あるメーカーのカレーを

棚に置くとき、その基準は、一日で6.6個が売れるか、

ということになる。



バーモントカレーやジャワカレーといった昔からの強い

ブランドカレーは一日で10個以上を売り上げるだろうが、

有名ブランドでないものや、新発売商品になると、

その数値はなかなか読めない。



そのカレーをバイヤー自身が食べてみて、

「これは美味い!」と思って採用することもあるが、

逆に、たいして美味くないのだが、テレビCMをたくさん

放映する予定のある商品は、まず間違いなく売れる

だろう、ということで採用することもある。




だが、美味しさのうんぬんや、コマーシャル効果などと

関係のない、「流行」に賭けるときもある。




"お菓子のハバネロが流行っている"という時期に、

"ハバネロカレー"が発売されることになれば、

これは流行に乗るだろう、ということで採用する。




また、ごく短期間、つまりスポット的な流行もある。




バイヤーが自宅でテレビを観ていて、

「次回のあるある大辞典は"野菜カレー特集"です」

などと耳にすると、即座にメーカー各社に電話を入れ、

野菜カレーをズラッと並べておいたりする。



翌週のあるある大辞典の放映後に、それらの野菜

カレーが飛ぶように売れることを見越してのことだ。



無論、メーカー側もあるある大辞典の情報を先に

つかんでおき、「来週のあるあるで放映されるので

うちの野菜カレーを棚に並べてください」と営業を

入れることもある。



まあ実際、そこまで営業力のある者は、メーカーに

そうそういるものでもなく、大抵の場合、バイヤーの

ほうがメーカーの営業マンより上手だ。




特に大手のデパートやスーパーになると、

メーカーの営業マンを鼻であしらうほど食品に詳しい

名バイヤーがいて、さまざまな情報を持っており、

よく新聞を読み、経済誌を読み、テレビを観ているものだ。






話は戻るが、青いハンカチ、である。




もし自分が、デパートやスーパーのハンカチコーナーの

商品バイヤーで、今年の高校野球のテレビ中継を見て、

斎藤投手が青いハンカチを取り出して汗をぬぐい、

それを見た女性たちが、かわいい!と声を上げたとき。



「これだ!明日から青いハンカチが売れるぞ!」



と立ち上がり、ハンカチメーカーに電話をかけまくり、

自分の担当するハンカチコーナーに

"小さい青いハンカチ特設コーナー"を設置し、

来たるべき特需に対応することができたろうか。





おそらく、流行に鈍感な自分にはムリだったと思うが、



高島屋イトーヨーカドーの名バイヤーたちは、

試合中継を見てすぐに、素早く対応したことと思う。




そして、地方のデパートやスーパーのバイヤーたちは、

青いハンカチのニュースを観てから腰を上げ、

慌ててハンカチメーカーに電話するのだが、

「すいません、もう○○デパートに買い占められました」

と返され、ガックリ肩を落とすのだろう。






青いハンカチが売れている、というニュースの舞台裏で

こういった様々なドラマが演じられているのだろう、と

思うと、さらに微笑ましさが増すものだ。





END

ダイエット食生活の意識が

ダイエット食生活の意識が壊れつつある。



まだ一週間も経っていないのに。





よしやるぞ!とダイエット食をはじめた日、



朝は、茶碗半分の黒米ご飯と納豆、みそ汁、

昼は、ライ麦パンと目玉焼きとオレンジジュース、

夜は、野菜たっぷり鍋とご飯、



といった感じだった。





それがだんだんと壊れていき、



昨日など、



朝にマクドナルドの朝セットを食べ、

昼に、うなぎのセイロ蒸しを一人前平らげ、

夕方に、そば屋で海老天そばを食べながら、

ビールの中瓶を一本空け、

寝る前に、ワインを1本空けた。




これでは痩せる食じゃなく、太る食、だ。






無論、ダイエットをあきらめた訳ではない。




きのう、あれだけ食べたことに自己嫌悪し、

こうやってブログにも書くことで、意識的に

自分を追い込むのが狙いなのだ。



苦しいダイエット期間を"起承転結"で示すなら、

現在、"承"に差し掛かっているところなのだ。






・・・・まあ、そんな言い訳や建前は置いといて。






ダイエット食において、抑えるべきポイントが

いくつかある。




まず、「油をなるべく摂らない」、ということ。




油は、まっすぐ脂肪に変わる。

ダイエットの目的は脂肪を落とすことなので、

脂肪をつけながら、それを落としていくというのは

愚の骨頂というものだ。




牛肉、豚肉、といった脂肉を避け、鶏肉にする。

魚も、脂の多いものを避け、できれば白身にする。



白身にしたからといって、天ぷらで食べるのは愚か。

天ぷらにしたり、揚げたりするのは避ける。




まあ、一番手っ取り早い方法は、肉を食べないことに

つきるのだが、そうなるとタンパク質がなくなって

しまい、筋肉が落ちる。




筋肉が落ちると基礎代謝が下がるので、食べても

食べてもカロリーを消費できず、逆に太ってしまう。




ということは、肉を食べずにタンパク質を取ればいい

わけだ。





自分の場合、卵と納豆、この二つを食べる。

一日に卵を一個、納豆を半パック、

これだけ食べれば、十分なタンパク質が補える。





スポーツクラブなどで筋肉をつけようとしている時は

これだけのタンパク質では足りないので、

脂を落とした豚肉を、野菜炒めに入れて食べるか、

もしくは鶏肉を食べる。納豆も1パックにする。




プロテインドリンクを飲む、というのが最も早い

方法なのだが、なんだかキモイ感じがするので

プロテインを飲むことはしない。





炭水化物は、量の調節が必要だ。



ご飯やパンなど、食べれば食べるほどカロリーが

増える。一日に必要な量だけを食べればいい。

自分の場合、小さいご飯茶碗を使っているので、

茶碗一杯を食べてもカロリーオーバーにならない。




丼やパスタは大敵だ。

牛丼一杯のご飯は、家のご飯茶碗の3杯分もある。

パスタも、カロリー計算をすればご飯の3杯分。

食べるときは、半分を残すようにすればいい。





タンパク質も炭水化物も、それなりの調整が必要と

なるが、逆に何も調整しなくていいのが、野菜だ。



おなか一杯食べたい、と思ったら、野菜鍋に限る。

野菜スープもいい。一回の食事で1リットルぐらい

飲んでも構わない。これで空腹を補う。



野菜を食べると、食物繊維とビタミンが摂れる。

それらの栄養素は、痩せる、太る、ということでは

なく、体の健康を保つのに必要なものだ。



食べれば食べるほど健康になり、

しかも、炭水化物やタンパク質にはならないので、

脂肪に変わる心配もない。一石二鳥というわけだ。






このように、ダイエット食というのは、その基本に

栄養素があり、どの栄養をどれだけ摂るのか、

という計算に他ならない。




つまり、もう少し深い知識に潜るなら、

「体の、どの機関を、どう使うのか」ということになる。





ダイエットや体作りをはじめるにあたり、

体の肉の部分を2つに分けると解りやすい。




「筋肉」、「脂肪」、この2つだ。




すべての肉は、カロリーを消費しながら維持される

わけだが、もっともカロリーを消費するのは筋肉だ。



脂肪の倍のカロリーを消費する。



スポーツマンがたくさん食事をするのは、

筋肉に必要なカロリーを摂取するためだ。





脂肪は、体を守るためにある。



カロリーも消費するが、筋肉ほど必要としない。





例えば、健康な人の体の肉を10として、



"筋肉が8、脂肪が2" の割合のAさんと、

"筋肉が3、脂肪が7" のBさんがいるとする。



筋肉は、1につき200カロリーを消費し、

脂肪は、1につき100カロリーを消費するとしたら、




Aさんは、1800カロリーを必要とし、

Bさんは、1300カロリーを必要とする。




だが、もし前者と後者が、一緒に食事をして、

同じ1800カロリーを摂取したとしよう。



Aさんは必要なだけのカロリーを摂取するが、

Bさんは、500カロリーオーバーすることになる。




このBさんの500カロリーは、どこに行くのか?





そう、脂肪に変わるのだ。



500カロリーにつき、脂肪が1増えるとする。

そうなると、Bさんは、

"筋肉が3、脂肪が8" となる。



次の食事からは、以前の1300カロリーではなく、

1400カロリーが必要となってくるわけだ。





この計算式に基づいて例を挙げると、



"筋肉が9、脂肪が1"のスポーツマンと、

"筋肉が1、脂肪17"のデブは、

お互い同じ1900カロリーを必要とする。




デブが、ずっとデブのままになってしまうのは、

まさにこのルールによるものだ。



ある程度まで太ってしまったら、毎回の食事で

余分なカロリーを摂ることがなくなるので、

あたかも健康な食生活をしている錯覚に

陥ってしまう。




脂肪体になると、体力が落ち、覇気が衰え、

体の内外が荒れてくる。ポリープができて

しまうのも余分な脂肪からくるものだ。




別にベジタリアンになる必要はないが、

自分の生活環境に必要なだけの筋肉と

脂肪を身につけ、それを維持するための

カロリーを摂取していれば、そのような

苦しい事態になることもない。






いまの自分の体の状況は、

"筋肉が4、脂肪が7"ぐらいだと思う。



以前は6対4ぐらいのバランスだったのだが、

仕事が内勤ばかりになったので、なんとなく

体のバランスがそうなってしまったようだ。




とりあえず、昨日までに壊れてしまった

ダイエット食生活を元に戻して、従来の体の

バランスにまで持っていきたいものだ。





END

九州はなぜ”九州”と呼ぶのか

九州はなぜ"九州"と呼ぶのか、知らない人が意外に多い。




福岡、佐賀、長崎、大分、熊本、宮崎、鹿児島、沖縄、

こう数えてみると、実は八県しかない。なのに九州。




小学生の頃に、このことを疑問に思い、父親に尋ねて

みたところ、"山口県も数えていい" のだと言う。




実際、九州のテレビ局の天気予報は、

「九州・山口地方の天気予報をお知らせします」

とアナウンスされるし、九州ネットで放映される番組も

"九州・山口ネット" とされるパターンが多い。




さすが父親、と褒めてやりたいところだが、

無論、山口県を入れていいはずなど無い。






九州とは、

豊前、豊後、筑前筑後肥前、肥後、

日向、大隈、薩摩

この九つを指している。




州、という言葉を当てはめて、正確に述べると、




豊前豊後を合わせて豊州(ほうしゅう) 今の北九州+大分。

筑前筑後を合わせて筑州(ちくしゅう) 今の福岡。

肥前肥後を合わせて肥州(ひしゅう) 今の佐賀+長崎+熊本。

日向が日州(にっしゅう) 今の宮崎。

大隈が隈州(ぐうしゅう) 今の東鹿児島。

薩摩が薩州(さっしゅう) 今の西鹿児島

この六州ということになる。





なんだ、やっぱり九つ無いじゃないか、と言われそうだが、

前述した、豊前・豊後・・・を数えて九つあるから、いいのだ。






自分の地元は九州なのだが、この"九州の由来"を知ると、

たくさんの "ナルホド" を感じることができる。





まず、豊州。



北九州と大分を合わせた州、というのが、妙に納得がいく。

福岡県には、福岡市と北九州市という二大100万都市が

あるが、どちらの街も市民も、まったく性格や気質が違う。



北九州の人は、福岡の人に比べて、明らかにオットリしている。

福岡の人間は早口で話すが、北九州の人間はゆっくり話す。

そう、まるで大分人のようだ。



北九州人と大分人は極めて性質が似ている。

ナルホド、彼らは元は同じ豊州人なのだ。





そういえば、筑豊、という土地がある。古くは炭鉱で有名だ。



これは、

筑州と豊州にまたがっているから"筑豊"、というわけだ。

ナルホド。





筑前筑後を合わせて筑州、となるが、

この州は、古い呼び名で"筑紫(つくし)"という。

筑紫もち」という地元銘菓の名はここから来た。ナルホド。





肥前と肥後を合わせた肥州は、古い文字では"火州"と書く。

熊本観光へ行くと、「火の国へようこそ」と書かれている

ことがあるが、これは火州に由来していたのだ。ナルホド。





日向は"ひゅうが"と読むが、古い読みで"ヒムカ"と読む。

「ひむかの黒馬」という焼酎は、ナルホド、ここから来た名だ。





鹿児島県を東西で分かつ、薩摩と大隈(おおすみ)、

これは桜島をはさんで西が薩摩半島、東が大隈半島、という

地名そのままだ。




"薩摩隼人(さつまはやと)"という言葉がある。

思慮深く無口だが、いざ戦いとなると滅法強いオトコ、の意。

明治維新の原動力になった薩摩の兵隊は、この薩摩隼人という

言葉そのものの戦いぶりで、他国がみな恐れた。




実はこの薩摩隼人、もともとは、



"思慮深く無口な薩摩隼人"と、"喧嘩が大好きな大隈隼人"、

この二つの性質が合わさって、薩摩隼人になったそうだ。




西郷隆盛の最期の戦いとなった「西南戦争」は、西郷が

若い人間達を教育するために作った"私学塾"の暴発によって

起こった惨事だが、

それまで思慮深く暴発を制止してきた西郷隆盛と、

血気盛んな若者達に火をつけてしまった桐野利秋との、

呼吸の不一致がもたらした運命でもあった。




そう。実は、

西郷は薩摩隼人、桐野は大隈隼人だったのだ。





まさに、歴史のナルホドである。








最後にもうひとつ、ナルホドを挙げよう。





九州、という名前の由来は前述したとおりだが、

この九つの州にまたがる道のことを、



"日本の西の海の道"、つまり 「西海道」 という。





では、日本の東の海の道、は?




そう、"東海道五十三次"で有名な、

三重・愛知・・・東京・茨城にまたがる 「東海道」 だ。





では、日本の南の海の道、は?




和歌山から四国にまたがる地域を指す 「南海道」 だ。





では、日本の北の海の道、は?




そう、今もなお地名として残っている、

「北海道」 なのだ。





おお、これもまさに、ナルホド、である。





END

大好きだったベーグル屋が

大好きだったベーグル屋が、突然マズくなっていた。




もともと東京で人気を博していたベーグル専門店。

自分の地元にも、数年前にデパ地下に一軒、

二年ほど前に路面店に一軒、合計二店舗があり、

若い女性を中心に人気を上げていった。




たくさんの種類の中でも、"十五穀"というベーグル

が大好きだった。



穀物の風味がとても豊かで、ずっしりと重たく、

噛むほどに味わいが増す、素晴らしいベーグルだった。





昨日、街に出たついでに久しぶりに店で買って、

会社に戻り、珈琲を淹れて、ワクワクしながら食べた。




・・・・・ずっしりと重たく味わい深い、あの食感は、

いったい何処へいったのやら。



スカスカで、やわらかく、味わいもなく、ただ、マズい。

まるでキツネにつままれたような感じにおそわれた。




一緒に食べた仲間の女性が、



"ふくらし粉が増えたね、もうこれ、美味しくないね"



と言った。




つまり、粉でふくらませて空気を増やし、スカスカになり、

そのぶん原価は下がったが、味も下がったということ

なのだろうか。




売上が悪く、儲けを増やすため、泣く泣く原価を下げた

というパターンなのかもしれない。



もし、そうだとしたら、悲しいことだ。




そして、自分にも責任を感じてしまう。




そんな事態になる前に、もっともっと、あの店の大好きな

ベーグルを、たくさん買って、お店の売上に貢献すべき

だったのだ。




そうすれば、こんな悲しい思いをせずに済んだろう。






大好きな食べ物の味が変わってしまったり、

大好きなレストランの味が変わってしまうのは、

とても悲しいことだ。





十二年ほど前、会社の先輩に連れられて、ある

ラーメン屋に行った。



"秘伝のたれ"で有名な、唐辛子ベースのラーメン。



はじめて食べたときの、あの美味しさと衝撃は

いまでも忘れられない。




食べた翌日に、友人達を連れていった。

どの友人達も、そのラーメンの美味しさに魅了され、

週に一度は食べにいくほどだった。




自分など、夜に食べたあと、また夜中に食べたく

なって、わざわざ起きて食べにいったことがある。



それほど美味かった。





ある日、友人から電話があった。すぐ店に来いという。



いつものようにラーメンを食べた。



まったく違う味になっていた。



味うんぬんの前に、麺も違うし、スープも違う。ネギも違う。




あまりのショックに、店を出たあと、裏口から

店長らしい人物に声をかけ、説明を求めたところ、

"経営者が変わった"のだと、こっそり教えてくれた。




味や材料が変わってしまったのも、その経営者の

判断なのだろう。



マズい、とまではいかないが、以前の味と比べると

月とスッポン、巨像と蟻、雲泥の差だった。




超絶美味だった秘伝のたれは、ただの味の素の

塊りになってしまった。





その後、このラーメン店は破竹の勢いで店舗を増やし

いまや全国知名度までになっている。




だが、以前の美味しさを知っている人間は、

この店の暖簾をまたぐことはないだろう。






美味しい食べ物に出会ったとき、

その美味しさに喜ぶのと同時に、

その味が永遠に変わらないことを祈る。





END