九州はなぜ”九州”と呼ぶのか

九州はなぜ"九州"と呼ぶのか、知らない人が意外に多い。




福岡、佐賀、長崎、大分、熊本、宮崎、鹿児島、沖縄、

こう数えてみると、実は八県しかない。なのに九州。




小学生の頃に、このことを疑問に思い、父親に尋ねて

みたところ、"山口県も数えていい" のだと言う。




実際、九州のテレビ局の天気予報は、

「九州・山口地方の天気予報をお知らせします」

とアナウンスされるし、九州ネットで放映される番組も

"九州・山口ネット" とされるパターンが多い。




さすが父親、と褒めてやりたいところだが、

無論、山口県を入れていいはずなど無い。






九州とは、

豊前、豊後、筑前筑後肥前、肥後、

日向、大隈、薩摩

この九つを指している。




州、という言葉を当てはめて、正確に述べると、




豊前豊後を合わせて豊州(ほうしゅう) 今の北九州+大分。

筑前筑後を合わせて筑州(ちくしゅう) 今の福岡。

肥前肥後を合わせて肥州(ひしゅう) 今の佐賀+長崎+熊本。

日向が日州(にっしゅう) 今の宮崎。

大隈が隈州(ぐうしゅう) 今の東鹿児島。

薩摩が薩州(さっしゅう) 今の西鹿児島

この六州ということになる。





なんだ、やっぱり九つ無いじゃないか、と言われそうだが、

前述した、豊前・豊後・・・を数えて九つあるから、いいのだ。






自分の地元は九州なのだが、この"九州の由来"を知ると、

たくさんの "ナルホド" を感じることができる。





まず、豊州。



北九州と大分を合わせた州、というのが、妙に納得がいく。

福岡県には、福岡市と北九州市という二大100万都市が

あるが、どちらの街も市民も、まったく性格や気質が違う。



北九州の人は、福岡の人に比べて、明らかにオットリしている。

福岡の人間は早口で話すが、北九州の人間はゆっくり話す。

そう、まるで大分人のようだ。



北九州人と大分人は極めて性質が似ている。

ナルホド、彼らは元は同じ豊州人なのだ。





そういえば、筑豊、という土地がある。古くは炭鉱で有名だ。



これは、

筑州と豊州にまたがっているから"筑豊"、というわけだ。

ナルホド。





筑前筑後を合わせて筑州、となるが、

この州は、古い呼び名で"筑紫(つくし)"という。

筑紫もち」という地元銘菓の名はここから来た。ナルホド。





肥前と肥後を合わせた肥州は、古い文字では"火州"と書く。

熊本観光へ行くと、「火の国へようこそ」と書かれている

ことがあるが、これは火州に由来していたのだ。ナルホド。





日向は"ひゅうが"と読むが、古い読みで"ヒムカ"と読む。

「ひむかの黒馬」という焼酎は、ナルホド、ここから来た名だ。





鹿児島県を東西で分かつ、薩摩と大隈(おおすみ)、

これは桜島をはさんで西が薩摩半島、東が大隈半島、という

地名そのままだ。




"薩摩隼人(さつまはやと)"という言葉がある。

思慮深く無口だが、いざ戦いとなると滅法強いオトコ、の意。

明治維新の原動力になった薩摩の兵隊は、この薩摩隼人という

言葉そのものの戦いぶりで、他国がみな恐れた。




実はこの薩摩隼人、もともとは、



"思慮深く無口な薩摩隼人"と、"喧嘩が大好きな大隈隼人"、

この二つの性質が合わさって、薩摩隼人になったそうだ。




西郷隆盛の最期の戦いとなった「西南戦争」は、西郷が

若い人間達を教育するために作った"私学塾"の暴発によって

起こった惨事だが、

それまで思慮深く暴発を制止してきた西郷隆盛と、

血気盛んな若者達に火をつけてしまった桐野利秋との、

呼吸の不一致がもたらした運命でもあった。




そう。実は、

西郷は薩摩隼人、桐野は大隈隼人だったのだ。





まさに、歴史のナルホドである。








最後にもうひとつ、ナルホドを挙げよう。





九州、という名前の由来は前述したとおりだが、

この九つの州にまたがる道のことを、



"日本の西の海の道"、つまり 「西海道」 という。





では、日本の東の海の道、は?




そう、"東海道五十三次"で有名な、

三重・愛知・・・東京・茨城にまたがる 「東海道」 だ。





では、日本の南の海の道、は?




和歌山から四国にまたがる地域を指す 「南海道」 だ。





では、日本の北の海の道、は?




そう、今もなお地名として残っている、

「北海道」 なのだ。





おお、これもまさに、ナルホド、である。





END