男というのは変な生き物

男というのは変な生き物だなぁ、と、

お盆休みを迎えるたびに思う。





昔、地元から遠く離れていたことが二度あり、

お盆に里帰りするたびに、友人に迎えられていた。




帰郷してから十年、いまは自分が

里帰りしてくる友人を迎える側になっている。






遠くに住んでいる友人が帰ってくるときは、

帰ってくる日が事前に分かっていても、

決して出迎えには行かない。




だが、その日は必ず空けておく。




そして、友人と合流すると、その日は

できるだけ遅い時間まで付き合う。




おかえり、ただいま、元気だったか?

なんて会話はしない。




ただ、昔のように話し、昔のように遊ぶ。




友人が、地元の方言を忘れて話すのは悲しい。

でも、それを指摘するようなことはしない。




友人が、どこか変わってしまっていても、

お前は、いつ会っても変わらないな、と言う。





友人に、仕事の調子はどうなのか、と聞く。

あまり良くない、と友人が言うと、

俺もあまりよくない、と答える。

俺のほうは調子が良い、などと答えることはしない。






里帰りした友人を囲んで酒を飲む。




仕事がつまらない、と友人が言う。

だったら辞めればいい、と皆が言う。




向こうで彼女ができない、と友人が言う。

だったら地元の彼女とヨリを戻せばいい、と皆が言う。




地元はいいな、と友人が言う。

地元はいいぞ、と皆が応える。






友人に、次はいつ帰ってくるのか、と皆が聞く。

まだわからない、と友人が答える。




わかったらすぐに連絡をしろよ、と皆が言う。






あと何日ほど地元にいるのか、と聞くことはない。

友人のほうも、地元を発つときは、そっといなくなる。




誰も見送りなどしない。




そして、次にまた友人が帰ってくるときも、

誰も出迎えには行かないだろう。






ただ、その日を、かならず空けておく。






本当に、男というのは変な生き物だ。






END