蚊を叩くのが上手だね、と

蚊を叩くのが上手だね、と言われるたびに、

ええ、O型ですから、と答えている。




O型は、よく蚊にさされる。蚊は、O型の血を好む。

そう、テレビでも実証されていた。

はなはだ迷惑なことだ。




夏になると、誰よりも多く蚊に刺される。

ただ、O型だから、という理由で、だ。




そもそも、O型だけいうのが不公平だ。

A型はハエに好かれ、B型はゴキブリに好かれる、

というなら話は分かるが、いまのところ、

O型だけが損をしていることになる。

世の中、間違っている。




まあ不平を言っても、蚊が絶滅してくれるわけでは

ないので、自分の身は自分で守らないといけない。





昔は、誰かが「蚊がいる!」と声を上げるたびに、

慌てて逃げ回っていたのだが、

そんなことをしてもいずれ刺されてしまうわけで、

ならば相打ちを覚悟で戦うべきだろう、

という境地に達したのは最近のことだ。



今では、蚊の姿を見つけると、自分から率先して

近づき、様々な技や知識を駆使して戦っている。




"温かい息を吐きながら近づく"

という技がある。



蚊は、温度の高いほうへと移動していく、という

習性がある。人の肌に近づいてくるのも、

ああ〜美味しそうだ〜、と寄ってくるのではなく、

人の体温に反応して動いているからだ。



この習性を利用して、蚊を仕留めるときには、

温かい息を吐きながら接近していくと、

蚊は遠くへ逃げず、身の回りを飛び回る。



こうすることで、蚊を見失うことがなくなるし、

自分の腕のリーチの範囲で戦うことができる。



この技は非常に使いやすく、また効果も高いので、

撃退率を飛躍的に上昇させてくれた。





戦いには、技だけでなく知識も必要だ。




メスは血を吸う、が、オスは吸わない。



つまり、オスの蚊と戦う必要はないのだ。



メスは、体が大きく、動きが遅い。

オスは、体が小さく、動きが素早い。

難しいが、慣れてくるとすぐ見分けられる。



「蚊がいる!二匹も!」という事態のとき、

素早く飛び回っているオスのほうに気を取られて、

その隙にメスに刺される、という間抜けなことに

なるパターンがよくある。

目障りなオスのことはあえて気にせず、

メスを仕留めることだけに心身を集中する、

これだけでも、憎きメスの蚊の撃退率が上がる。





万が一、蚊の姿を見失ったときに有効な技がある。



蚊の生態を研究している大学教授によると、

蚊のオスとメスは、互いに音波を出しており、

メスは、オスを探すときに、

ピアノ音程でいう "ラ" の音波に引き寄せられるそうだ。



「蚊がいる!しかもメス!ああっ、見失った!」

という混乱に見舞われたとき、

慌てずに、すっと部屋の真ん中に立ち、

ラーラーラーラー、

と、声高らかに唄う。



そうすれば、隠れていた蚊がノコノコと姿を現す、

そこを仕留めればいい。



一度この技を実践してみたのだが、残念ながら

仕留めることは出来なかった。

おそらく、ラの音程がずれていたのだろう。



周囲に人がいる場合は、先に十分な説明をして

行動したほうが無難だろう。説明も無しに行動に

移ってしまうと、アブナイ人だと思われかねない。





いずれにせよ、

O型の血液型で生まれついたからには、

プライドや外聞をかなぐり捨ててでも、

夏の蚊と戦う心得が必要だ。





余談だが、世界における血液型分布によると、

南米諸国、とくにメキシコやブラジルでは、

国民の75%以上がO型なのだそうだ。



かの国には、憎き蚊と戦うための必殺技が

数多く存在するのだろう。



機会があれば、ぜひ会得させてもらいたいものだ。





END