カラオケに行く機会が

カラオケに行く機会がめっきり減ってしまっている。




以前よくカラオケに行っていた仲間が、あまり誘って

くれなくなった。



あいつは社長をやってるから、たぶん忙しいだろう、

と思い込んでいるのだろうが、要らぬ遠慮というものだ。



以前より自分の時間を自由に使えるようになったので、

遊びの予定が立てやすい。遠慮せずに誘ってほしい。




ああ、カラオケに行きたくて仕方ない。






自分の世代は、まさにカラオケブーム真っ只中だったので、

学生の頃から二十代前半にかけて、友人と集まるたびに

かならずカラオケに行っていた。



思い起こせば、それほどレパートリーもないのに、毎回

カラオケに行くたびに、同じ曲ばかり歌って、同じように

盛り上がっていた。




そういえば、カラオケ全盛期の頃、"禁止曲"があった。



なぜ禁止かというと、あまりに人気があって、どこに

行っても皆その曲を歌うので、仲間内で歌うときは、

"もう聞き飽きたし、時間の無駄だから、禁止"

というわけである。



米米クラブの「浪漫飛行」、

チャゲ&飛鳥の「SAY YES」、

尾崎豊の「I LOVE YOU」、

サザンオールスターズの「いとしのエリー」、



このあたりが、"禁止曲"だった。



いまでもカラオケのあるスナックや居酒屋に行って、

見知らぬ人がこのあたりの曲を歌い出すと、

「おいおい、そいつは禁止だぜ・・・」と

つぶやいてしまう。




逆に、"リクエスト曲"というのもあった。



仲間それぞれが、オハコの曲をもっていて、みんな

その曲を歌い込んでいるので、非常に巧い。

"お前のあの曲を聴きたいからリクエストするよ"

というわけだ。



この"リクエスト曲"になると、自分の仲間内では

なぜか"いまどきの曲"がまったく登場しなかった。



井上陽水の「少年時代」、

日吉ミミの「北風ぴゅうぴゅう」、

石原裕次郎の「赤いハンカチ」、

布施明の「シクラメンのかほり」、



など、どれをとっても世代の違う曲ばかりだった。




これには明確な理由がある。

どれも、「自分達の親父が好きな曲」なのだ。




あの頃の自分達は、ウォークマンなどの便利な

オーディオシステムもあり、テレビには音楽番組

が溢れ、遊技場へ行けばプロモーションビデオ

が流れたりと、充実した音楽環境に囲まれていて、

音楽業界も最高潮の盛り上がりを見せていた。



しかし、流行のビートロックやダンスミュージック

を聴きながらも、いざ、自分が口ずさんでしまう

ような好きな曲となると、やはり昭和の曲、親父の

曲、が強かったのだ。



自分の場合、父母ともに音楽好きで、

親父に至っては、自分の歌った曲をテープに録音

して聴き入ったりするほどの歌好きだったので、

おのずと自分も昭和の曲に慣れ親しんできた。



父母の世代では、石原裕次郎布施明加山雄三

あたりが主流だったようで、これらの曲をかなり

聴き込んできた。



いまでもカラオケに行くたびに、

お前はいったい何歳なんだ、と皮肉られている。

が、同時に、

お前の歌う曲は、いい曲ばかりだなぁ、と

感動されることもしばしばある。



これは無論、自分の歌唱力の高さも影響しているが、

何より、昭和の曲は、抜群に優れた曲が多い。



大好きな曲に、千昌夫の「夕焼け雲」という曲があるが、

メロディ、構成、そして千昌夫の歌唱力や声の特徴が

ピタリとハマっていて、もはや芸術と呼ぶべき曲だ。




そう、千昌夫にしても、布施明にしても、

昭和の歌手の歌い方や声の特徴は、他の誰の

真似でもなく、いまも誰にも真似できない。

ここが、昭和の音楽、昭和の歌手の素晴らしい

ところだ。




逆に、平成の音楽を一言で表現するなら、

「サル真似」だ。



尾崎豊ブルース・スプリングスティーンの真似、

ミスターチルドレンエディ・コクランの真似、

B’zはエアロスミスの真似、

どこを見渡しても、サル真似ばかりだ。



先日も、テレビを観ていたら、

"ヒップホップレゲエの新星"という、意味の解らない

紹介をされている若者バンドがいて、僕らは僕らに

しかできない音楽をやってるんだぜ、みたいな事を

偉そうに言っていたが、いざ曲を聴いてみると、

ブジュ・バンタンのサル真似だった。



先日、日本のある有名画家が、イタリアの画家の

絵を盗作していたということで、日本芸術大賞か

何かを剥奪する、というニュースが流れていたが、

あれを悪とするなら、日本のロックバンドは全員、

レコード大賞などの賞を剥奪されるべきだ。



まあ、そこまで言うのは酷かもしれないが、

彼らが、偉大な音楽アーティスト達の真似を

するなら、せめてもう少し巧く真似てほしいし、

ある程度売れてきたら、真似の元になっている

歌手の曲をカバーして発売することで、その歌手

に印税で貢献するくらいの配慮をしてほしい。





そういうわけで、自分がカラオケに行くときは、

愛する昭和の曲を熱唱しては、その曲の良さを

皆に説いて回ることを楽しみ、

仲間の誰かが、平成のサル真似歌手の曲を

歌うたびに、その行為を罵倒することを楽しみ

にしている。




ああ、はやくカラオケに行きたい。

石原裕次郎千昌夫を熱唱しながら、

B’zやGLAYを唄うヤツを罵倒したい。






・・・あ、もしかして、

誘われなくなった理由、コレ?





END