炎天直下のゴルフでクロマティ

炎天直下のゴルフでクロマティのように黒くなってしまった。




なんでこんな真夏にゴルフをやらなきゃいけないのか、と

ボヤきながらの二日間だったが、風が気持ちよく吹いて

くれたおかげで、自己ベストのスコアが出た。105。



数値はたいしたものではないが、普通だと120から140

の間をウロウロしていた人間が、急に100台のスコアで

回ったものだから、コンペ仲間達は非常に驚いた。




自己ベストが出た要因は、風が気持ちよく吹いたことだけ

が原因ではなく、一緒に回った仲間同士のプレッシャーや、

キャディーさんの適切なアドバイスのお陰もあったのだが、



一番の要因になったのは、ゴルフの前日にインターネット

で読んだ、"亀田パパ"のインタビュー記事だった。




亀田パパとは、亀田三兄弟を育てた父、史郎さんのことだ。

ボクシング経験も、トレーナー経験もない父・史郎さんが、

息子達を鍛えるのに、丸太を背負って山道を歩かせたり、

海岸を裸足でダッシュさせたりと、独自のトレーニング方法

を編み出し、プロのトレーナーも顔負けの肉体作りを成功

させたのは有名な話だ。



自分が読んだインターネットのインタービュー記事でも、

この肉体トレーニングについての話がほとんどだった。

が、そのインタビューの中で、一箇所だけ、

精神面に関する記事があり、読んで、目をみはった。




実は亀田兄弟、幼い頃に、ボクシングをテレビで観る

ことを、父から禁じられていたそうだ。



子供がスポーツマンになる夢を持つとき、大抵の場合は

テレビに映る有名選手を観て、憧れを抱くことがきっかけ

になるものだろう。しかし、亀田家の場合は違ったらしい。



子供達に物心がついたころ、父はようやく息子達に

ボクシングを見せる。

しかし、肝心の試合は一切見せず、勝者がベルトを

巻いて、リング上でフラッシュを浴びているシーンと、

表彰されるシーンだけを見せ、子供達に、ボクシング

の素晴らしさを説いたそうだ。




なぜ肝心の試合の内容を見せないのか、との問いに、

試合には勝者と敗者が同時に存在する、勝利の瞬間

を見せるということは、敗北の瞬間も同時に見てしまう

ことを意味する、ボクサーは敗北の勉強をする必要は

ない、だから試合を見せなかったのだ、と答えている。




ちなみに、そのインタビューをした記者の談だが、

女子ゴルフの横峰さくら選手のパパも、ゴルフの試合

を娘に見せるとき、ミスショットのシーンは絶対に

見せず、やはり勝利者の勝利の瞬間と、表彰式の

シーンだけは、しっかりと見せていたそうだ。




ちなみに、現ジャイアンツ監督の原辰則は、

現役時代、バッティングの調子が狂ってきたら、

家に篭もり、部屋を真っ暗にしてテレビをつけ、

偉大なホームラン王達のホームランシーンだけを

編集でまとめた自作のビデオを、何回も何回も

繰り返し観ていた、というのも有名な話だ。




亀田パパも、横峰パパも、原辰則も、

いわゆる"イメージトレーニング"を大切にした。





なるほど、そういうことか!と手を打ち、さっそく

実践にとりかかったのが、前日の昼頃。



これまでゴルフコンペの前日には、必ずといって

いいほど練習場に行っていたのだが、それでは

自分の下手なショットが脳裏に焼き付いてしまう

ので、練習場には行かずに、インターネットで、

タイガー・ウッズのスーパーショットの映像を

入手して、これを何回も何回も繰り返して観た。



さらに、柔道のヤワラちゃんが、試合前に必ず

ウォークマンをつけて、一番大好きな音楽の曲

を聞いてテンションを上げる、という心理効果を

実践していたことを思い出し、

自分のお気に入りの映画のひとつである、

北野武監督「座頭市」のビデオを観たり、

別にお気に入りではないが、テンションが

上がりそうだという理由で、クレイジーケン

バンドのアルバムを大音量で聞いたりしてみた。




・・・そして出たのが自己ベストスコアの105。

まさに効果テキメン、である。




そういうわけで、次回のゴルフコンペにそなえて、

名プレイヤー達のスーパーショット集のビデオを

買ってみたり、コンペ中に音楽が聴けるように

MP3ウォークマンを買ったり、コンペ当日のお昼

ご飯のときに、ビールではなく、好きな飲み物を

持ち込んで飲んだほうがテンションが上がるはず

なので、大好きなのワインの銘柄を探して買ったりと、

あらゆる布石を惜しまぬつもりで、準備に勤しんでいる

ところだ。



おそらく周囲の人間は、こいつは何をやっているのだろうと

いぶかしむだろうが、まさかゴルフの準備とは思うまい。

これもまた、楽しみ甲斐があるというものだ・・・。





END