太ってきたので、また

太ってきたので、またフィットネスクラブに通うことに決めた。

いずれこうなるだろうな・・・とは想像していたのだが。




フィットネスクラブに通うと、劇的に痩せることができる。

たくさん運動するから痩せる、という単純な理屈だ。



人は、食べて太り、動いて痩せる。いや、じつに単純だ。




四年程前に、街中のフィットネスクラブに通った。



「ダイエットシンゴ」という本を読んだのがきっかけだ。

香取慎吾がドラマの役作りのために、"筋肉質で痩せた体"

を目指して、食生活や運動量を大きく改善していく本だ。



ダイエット本は数知れず出回っているが、この本は面白い。



普通のダイエット本だと、

「ダイエット中は、絶対に暴飲暴食してはいけません。」

とだけ書かれていて、その一文を読んだだけでヤル気が

失せてしまうのだが、香取慎吾は、ダイエット中でも、

「あー!もう駄目!」と、平気で友人と飲みに行ってしまい、

ステーキやピザをたらふく食べてしまう。

翌日になって深く自己嫌悪し、その日は野菜スープだけで

過ごして、前日の暴食と帳尻を合わせようとするのだ。



豚骨ラーメンなど、ダイエットの最大の敵だが、彼の場合、

「麺を半分残して、スープを飲み干さなければOK」という

勝手な解釈で食べてしまう。

食べたいものが食べれないストレスを感じて太るよりマシ、

という理屈だ。いやぁ、実に理にかなっている。




食事はともかく、欠かせないのが運動だ。

豚骨ラーメンを食べた翌日は、必ずフィットネスクラブで

運動をする。食べた分を取り返すわけだ。

逆にいえば、フィットネスクラブに行く日、または前日の

夜は、多少おいしいものを食べても、自己嫌悪せずに

過ごすことができる。



タイガー・ウッズは、ハンバーガーが大好物だそうだが、

食べたあとに5キロは走るらしい。

ハンバーガーのために5キロも走るのか、と考えると

そこまでして食べたいとも思わないものだが、

これがフィットネスクラブに通っていると、なんだ5キロで

済むのか、という感覚になってくる。




自分が以前通っていたフィットネスクラブには、

ランニングマシーンコーナーの前に、何台もテレビが設置

してあり、イヤホンをつけてテレビを楽しみながら走ることが

できた。走ることに集中していると、あまり長続きしないのだが、

テレビを観ていると、これが適度に気が散って、案外長く走る

ことができるものだ。



そういえば、サッカー中継が始まるのと同時に、ランニング

マシーンで走り始めたことがある。

サッカーというのは、とにかく走るスポーツなので、これは

いいキッカケだと思い、プレイボールと同時に走り始めて

みたのだが、前半が終わった時点で力尽きた。

サッカー選手は、やはりすごい体力の持ち主なのだ。




ランニングマシーンで走る、というだけで、体の脂肪は

テキメンに落ちていく。脇腹についていた脂肪が取れて、

ズボンがブカブカになる。アゴが削げる。カッコ良くなる。




脂肪が適度に落ちたあとは、筋肉をつける。

ダンベル運動をしたり、様々な運動器機を使って、

体のいろんな場所に、つけたいだけの筋肉をつける。




オトコとしては、この運動が非常に有意義なのだが、

ひとつ、大きな問題がある。





あまり熱心に筋肉運動ばかりやっていると、気のいい

人から声をかけられるのだ。



「いい体になってきたね・・・、僕と友達にならないかい?」

つまり、そういう人達だ。




「友達になってもいいけど、ホモ達にはなりませんよ」、と

はっきり断りたいところだが、なにしろフィットネスクラブで

大量の筋肉をつけている人達だ。もしもトラブルになって

取っ組み合いになっても、絶対に勝てるはずもない。



「はぁ・・・よろしくお願いします。」と答えながら、そっと

その場から去る。そして、その日は絶対にサウナルーム

に入らない・・・これが彼らと揉めない秘訣だ。




もうひとつ、大切なことがある。



彼らの"恋"に決して接しない、ということだ。




通っていたフィットネスクラブに、地元テレビ番組に出演

している男性タレントが通っていて、自分は彼を見知って

いたので、ある時、たまたま一緒になって会話をしていた。

話が終わって彼が去ったあと、ふと自分の後ろに気配が

して振り向いてみると、色白で、しかし筋骨隆々とした体で、

重量上げ選手のようなユニフォームを着た一人のオトコが、

自分を涙目で見つめながら、カン高い声で言った。




「あなた、彼の、何なんですかっ?どういう関係ですかっ?」




瞬時に、ヤバイ!と思って、すぐにその場を立ち去ろうとした

ところ、そっと優しく腕を掴まれた。ビクッとその場に立ち止まる。




「もうここには来ないでください。お願いですから。お願いです。」




そう言って、彼は、さっと顔を伏せ、遠ざかっていった。




あのときほど、カラダ中に鳥肌がビッシリと出たことはない。



彼の要望を容れ、間もなく、フィットネスクラブ通いをやめた。





いま、あらためてフィットネスクラブに通おうとしているが、

無論、前に通ったところへ行くつもりはない。なるべくそう

いった人達と接することのないような場所を探している。



入墨をした人はお断り、との規約は目にするのだが、

ホモはお断り、というルールを決めている処は、どうも

無いようだ。





ホモ対策だけは、自力で何とかしなければいけないのか…。





END