「座右のマンガ」という特集を


「座右のマンガ」という特集をやっている男性誌を見つけた。




幼いの頃から、漫画を読みながら過ごしてきた、

団塊ジュニア世代のオトコとしては、

ちょいワルオヤジのモテ系ネクタイ」だとか

デジタル家電ベスト5」といった、ありきたりのものより、

「座右のマンガ」というタイトルのほうが、よほど魅力的に

感じてしまうわけだ。




おもむろに雑誌を手にとりつつ、

自分の頭の中にある歴代マンガリストを、

ネオ(byマトリクス)並の高速さでエクスポートし、

エディットし、アップロードした結果、

自分勝手な想像が浮き上がる。




<自分が選ぶ座右のマンガ>

1位:「あぶさん

2位:「ピンポン」

3位:「沈黙の艦隊




沈黙の艦隊」のスケールの広さ、ストーリーの面白さ、

アクション描写のレベルの高さ・・・

いや、もっと単純に、海江田がいい。

そして、海江田だけじゃなく、登場する日本人キャストが、

人間道徳という名の盾と、武士道という名の剣を手に、

国際社会を相手に戦っていく姿が、本当に格好いい。




「ピンポン」は、漫画という域を完全に超えてしまっている。

ピンポンは国宝級だ。

漫画家の松本大洋人間国宝であるべきだ。

本来、"座右のマンガ"というジャンルではなく

"芸術的マンガ"といったジャンルに入るべき作品だが、

そういう括りを抜きにしてしまうだけの存在感がある。




あぶさん」。ああ、「あぶさん」。

あぶさんを読んで、何度感動したことだろう。

あぶさんを読んで流した涙の量は、

これまでの人生で流した涙の量の半分を占めている。




こんなストーリーがある。

ある子供がいる。子供には大切な自慢がある。

父親がプロ野球ピッチャーなのだ。

でも、不満がある。これまで一度として、

父親が試合に出たのを、見たことがない。

だが、その父親が、プロ野球オールスター戦で

マウンドに立つという。

「うちのパパを見てくれよ!」

子供の誘いで、クラスの友達みんなで、その

オールスター戦を観に行こう、ということになる。

しかし、それを聞いた母親は涙してしまう。

実は、その日は、父親の引退試合なのだ。

しかも、選手としてマウンドに立つのではない。

彼は、子供が物心つく以前に、ある試合で肩を壊し、

すでにプロとしてはやっていけなくなったのだ。

一度は野球を辞めることを決心したが、

幼い子供の、野球選手の父への憧れを失わせたくない、

と思いとどまり、

プロ選手としてではなく、バッティングピッチャー、つまり

バッターの練習用のピッチャーとして、

不遇な環境を覚悟で球団に留まり続けた。

そして、引退の舞台として、オールスター戦前の余興である

恒例のホームラン競争のピッチャーとして、

野球人生最後のマウンドに立つことになった。

愛する息子に初めて見せるマウンド上の自分の姿が、

ホームランを浴び続けるピッチャーという図になることは

はじめから解っている。

しかし父親は、

最後の雄姿を息子にひと目見せたいと、マウンドに立つ。

ホームラン競争がはじまる。

憧れの父親のマウンド姿を見た子供は、喜びに感極まる。

しかし、その子の理想は、次第にくずれてゆく。

父親がマウンドに立っているのに、

他の選手は誰も守備についていない。

投げても投げても、どんどん打たれる父親の姿。

ホームラン競争のバッティングピッチャー・・・

バッターが簡単に打てる球を投げて、その球を

ホームランしてもらう。

それが彼に課せられた仕事なのだが、

幼い子供達には、それが解らない。

「おまえの父さんはヘボピッチャーだ」

友達から心ない言葉を浴びせられる。

肩を落とす子供。



そして、最後のバッターとして、あぶさんを迎える。

彼は、バッターボックスに立つ前に、マウンドに向かう。

そしてピッチャーに言うのだ。

「本気で投げてくれ」

驚くピッチャー。

だが、あぶさんの目を見て、その真意を理解する。

彼は、あらためてキャップをかぶり直す。

第一球。渾身のストレートにファウルチップするあぶさん

目をみはらせ驚くキャッチャー。

野次を飛ばす観客。慌てるテレビ中継。

第二球、空振り。第三球、ファウル。

次第にどよめき出すスタンド。

ベンチから、ミットをつけた選手たちが飛び出し、

マウンドに声をかけながら、全員が守備につく。

選手たちは共有したのだ。

引退するバッティングピッチャーに捧げる想いを。

第四球、ショートゴロ。第五球、第六球、第七球と、

息をのむ真剣勝負が繰り広げられ、

スタンドの盛り上がりはピークに達する。

最後の一球、あぶさんはバットを振りぬき、

ボールは高く宙に舞い上がり・・・・・・

フェンス直前で、センターのミットに収まる。

割れるような拍手に包まれるスタンド。

お前はまだまだ現役でいけるぞと、マウンドに立つ

ピッチャーに賞賛の声を飛ばす観客。

号泣する妻。笑顔の子供たち。

その輪の中に、息子の姿がある。

その姿を確認して、父親は涙を隠して天を仰ぐのだ。




この漫画は、人の心の真ん中を、いつもむき出しにしてくれる。

自分が腐ってきたなと感じたとき、いつもこのマンガを読む。

そして、いつ読んでも、自分をキレイに洗い流してくれる。

自分がいつか死ぬ間際に、

神様が10分間だけ走馬灯を見せてくれるのなら、

そのうち8分を使って、あぶさんを読み返すことだろう。



・・・・などと、半ば自己陶酔による目頭の熱さを感じながら、

歴代のマイ・フェイバリット・マンガ達に深い思いを馳せつつ、

ゆっくりと雑誌のページをめくった。

あぶさんや、沈黙の艦隊に、熱い想いを抱いている誰かと、

心の共有ができる素晴らしい機会が訪れたことに感謝しながら。




<読者アンケート・座右の漫画ベスト5>

どれどれ・・・・




1位:「スラムダンク

2位:「ドラゴンボール

3位:「北斗の拳

4位:「タッチ」

5位:「ワンピース」






おいおーい!




END